【本の紹介】麻布国語2022 芥川賞候補作!

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麻布の過去問を見てその質の高さに驚いた私。これまでの麻布の国語の出典を調べて、そこから読書の幅を広げていった我が家。2022年2月1日の入試ではどんな本から出題されるかな、と楽しみにしていると、、、、驚いた!

『氷柱の声』(くどうれいん著)

この本は、ご存じの方も多いと思いますが、芥川賞の候補作でした。芥川賞は「The 文学」といったイメージがあって、私は近づいたことがありませんでした。なんとなく、中学入試の物語文と言えば、児童書、と考えていたので、とても驚きました。文学を前に、大人も子どももないのですね。麻布の社会の入試問題からも感じられますが、麻布中受験を検討するならば、、、子ども扱いは、もうおしまいです。

さらに、、、後日知ったのですが、この作品は同じ年の海城中学や、開成高校の入試でも、同じ個所から出題されていたのです。開成中学ではなく、開成高校ですよ!見よう見まねで読書を進めていましたが、国語の先生方が張っているアンテナというものは感度においても、反応性においても私のものとは大きく異なることを実感しました。この本を読むと、学校の先生方が生徒に求める資質が見えてくるような気がしました。(「氷柱の声、受験」と入れて検索すると多くのブログで、解説や考察がされていますよ。)

以下、余談です。この本では、出題部位とは別の個所で、被災者の中で被害の程度が異なっていて、それぞれの被災者が抱える感情や傷が異なることが描かれています。この本を読んで私は自分の中に無意識に差別につながる考えがあることを気づかされました。

どういうことかというと、、、東日本大震災があった時、私は東京にいました。大きく揺れたものの、電気や水道は止まることはありませんでした。私は「被災者」という言葉を使用した時、「被災した人」と「被災していない人」とに無意識に分けてしまっていました。そして私は自分を「被災していない人」と捉えるのです。一方で、「被災した人」に対しては、「被災者」という言葉を使って、自分とは異なるグループの人と捉えるのです。さらに言えば、「自分とは異なるグループ」という枠組みを当てはめて、それ以上深く考えようとしない、思考停止に陥っていた、ということです。「被災した人」の中に同じ人は1人もいません。にもかかわらず、「被災者」という言葉を使うことで、1人1人の個別性から目を背けていたように感じました。

同じことは、いろんな場面で言えます。「障がい者」という言葉を使えば、障がいの程度や取り巻く環境の個別性を無視して、「障がいのある人」と「障がいのない人」とに分けてしまいます。1人1人自分の顔があって個性があるというのに。「LGBTQ」と分ければ、「LGBTQの人」と「LGBTQでない人」に分けてしまいます。いやそうじゃない、と言って、「LGBTQ+」としても同じでしょう。人を何らかのグループに分けようとすると、それは個別性を無視することになります。みんな、自分の名前があるのに。グループ分けする前に、名前を呼ぼうよ。

言葉は、コミュニケーションの1つの道具で、互いに理解し合うのに必要です。しかし、言葉には何かを定義することで「切る」という力があります。言葉は、切って、境界を作ります。「〇〇の人」と「〇〇でない人」といった具合に。そしてその思考は、相互理解を妨げることがあります。理解のための道具が、使い方によっては相互理解を妨げるという矛盾。

以前出席した早稲アカの麻布中入試に向けた保護者説明会で社会の先生が仰っていました。「麻布の社会の問題に共通するテーマは『他者理解』です」と。

こんなことを『氷柱の声』を読んで、当時、考えました。とてもおススメの本です。

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